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普通の大人になりたい。映画「ヒミズ」

普通の大人になりたい。映画「ヒミズ」

2015.06.22邦画

ただ普通に生きたいと願う少年とそれを見守りつづける少女の姿を描いた映画「ヒミズ」。人としてどう生きてどう死ぬかという姿が心に突き刺さる青春映画のレビューです。

「ヒミズ」のストーリー・あらすじ

普通の大人になることを夢見る15歳の少年、住田佑一(染谷将太)は、川沿いの古びた貸しボート屋で母親と一緒に暮らしていた。ボート屋の側では、震災でホームレスとなった数人の大人たちがテントを張って住んでおり、住田と共にありふれた日常を送っていた。

そんなある日、借金を作り蒸発した父が金の無心に戻ってくる。父は自分に対する住田の態度に腹を立て、凄まじい暴言と暴力を浴びせ再び去っていった。さらに、母親も新たな男と駆け落ちしてしまい、中学3年生という若さでたった独りで生きていく事になってしまう。

そんな住田を気にかける一人のクラスメート茶沢景子(二階堂ふみ)は、テント暮らしの大人たちと共に、住田を励ましボート屋を手伝い始めるが…。

映画データ

2012年 日本 130分
監督/園子温
出演・キャスト/染谷将太、二階堂ふみ、渡辺哲、吹越満、神楽坂恵、光石研

「ヒミズ」の感想・レビュー

これまで園子温(そのしおん)監督の映画は、「冷たい熱帯魚」「恋の罪」「自殺サークル」「愛のむきだし」などを見たことがありますが、そこまで多くの作品を知っているワケではありません。その上で、園子温作品の印象をいえば「鬱屈」や「抑圧」といった心理的に受け入れづらいヘビーな内面の描写が多く、見た後の心地の悪さが異常に残る映画といったものでした。

そんな中、この「ヒミズ」という映画に関しては、エンディングを迎えた時の、清々しさと安堵感がとても印象的な作品でした。

真摯な少女の姿

少女が絶え間なく注ぐ真摯な愛情は、少年の心を次第に解していきます。幾つもの問題が少年にふりかかる状況ですら、少女の温かい笑顔と行動は、生きていくことの「微かな希望」を与えてくれます。

ある日訪れる「大きな事件」をキッカケに少年の心は大きく歪んでいきますが、そんな姿を前にしても変わらずに少年と向き合いつづける少女の姿に、傍観者である「ただ映画を見ているだけの人間」ですら、どうか二人で生きつづけてほしいと強く願ってしまうほどに没入させられます。

住田頑張れ

最後に2人が叫ぶ「住田頑張れ」という言葉。個人的には、他の青春映画では感動の押し売りのような「うそ臭さ」を感じてしまう場合もある言葉です。

しかし、すでに少年の生死を固唾をのんで見守るまでに没入している状況では、本作から発せられる「頑張れ」という言葉にはまったく嫌悪感はなく、取ってつけたような押し付けがましさもありません。たとえ、頑張ったからといって、社会的には普通どころか、底辺の位置にしか居場所はないかもしれない状況ですが、ただただシンプルに「頑張れ」と応援したくなります。

この「心にすんなり入ってくる感覚」は、他の映画ではあまり感じたことのないモノで、とても新鮮な気持ちにさせられました。

「ヒミズ」のまとめ

今回ご紹介した映画「ヒミズ」は、古谷実さん作の漫画「ヒミズ」が原作となっており、震災を背景に絡めたことも合わさって、原作ファンからだけでなく倫理的な面からも批判的な感想が見受けられる作品となっています。当然、人それぞれ思うところはあるかと思いますが、個人の感想としては、ここまで映画の中の主人公に対して「生きてほしい」と強く願った作品は他にはありません。

少年の境遇は特異な状況とはいえ、「普通と普通じゃない」の境界線で揺れ動く姿には、少なからず誰にでも共感できる部分があるような気がします。

というわけで、やっぱり邦画はいいなと素直に思えた映画でした。興味のある方はぜひぜひ。

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