ハリモグラのレビュー

生きていくことの憤り。アニメーション「カフカ 田舎医者」

生きていくことの憤り。アニメーション「カフカ 田舎医者」

2015.03.20アニメーション

生きるということの不条理さを、幻想的で特異なビジュアルで表現したアニメーション作品「カフカ 田舎医者」。誰もが感じる人生の憤りを見て取れる短編映画のレビューです。

アニメーション「カフカ 田舎医者」とは?

プラハの作家フランツ・カフカの短編小説『田舎医者』を原作としたアニメーション作品。世界的な評価を受けている監督「山村浩二」さんが、不条理な世界の絶望や怒り、切なさを特異なビジュアルで表現しています。

映画データ …… 2007年 21分 監督/山村浩二 キャスト/茂山千作、茂山七五三、茂山茂、茂山逸平、茂山童司、金原ひとみ

カフカの短編小説「田舎医者」

本アニメーションは、小説「田舎医者」をもとにストーリー展開されます。小説自体のあらすじを理解しておくことで、アニメーションの世界観に入り込みやすくなるかと思います。

語り手の田舎医者は、10マイルも離れた場所で重病人の知らせを受けて困り果てている。外は吹雪が吹き荒れているというのに、馬車を引き立てていく馬がいない。医者が腹立ち紛れに豚小屋を蹴飛ばすと、そこから馬丁とともに二頭の馬が現れる。そこで医者は馬丁に命じて目的地へ向かおうとするが、医者の女中ローザに目をつけている馬丁は留守番をすると言い張る。馬丁が手を打ち鳴らすと馬が馬車を引いて駆け、医者はあっという間に目的地につく。患者の家では家族が出迎え、ベッドに横たわっている少年のもとに医者を案内する……

Wikipedia 田舎医者

原作をさらに不気味にするアニメーション

アニメーションの特筆すべきところは、不条理さを引きずりながら「心の奥深く」をえぐってくるような、精神的な圧迫感のある心理描写だと思います。

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異様な世界を創りだすビジュアル表現

必要最低限の配色や、いびつな線描のイラストレーション、形を変え歪んでいく人物のフォルムや、重みと軽さが絶妙に表現されたモーションは、不気味で重苦しい世界にある「不安」をより掻き立てます。カフカの作風から感じ取れる「無慈悲な世界観」に加え、それ以上に異様なビジュアル表現が上積みされることで、ますますアニメーショの世界観に引き込まれていきます。

異質さを増幅させる狂言の響き

ナレーションや声優をつとめたのは、狂言師で人間国宝の「茂山千作」さんをはじめとする茂山一家です。狂言らしい独特な発声や言い回しなどの『響き』が、異質な世界観をさらに強調しているようです。

他人事ではない人生の不条理

最初は、作品中に散りばめられた本質を素直に受け入れることができず、「不気味なアニメーション」という感想で終わらせていたように思います。しかし、繰り返し見ていくにつれ、登場人物がもつ複雑な心情描写を、自分自身と重ね合わせるようになっていきました。

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他人事として見る不条理さや異質な世界ではなく、どんな人間も感じているであろう憤りを「ひとつの姿」として見ることができる面白いアニメーション作品です。

好き嫌い分かれる作品ですが、興味のある方はぜひ。

YouTube  Yamamura Animation

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